2019年4月30日火曜日

iEPG

ヘンリーユーエンにお願いしたらディスカウントしてくれるとのことだったが、スペシャルプライスだったとしても払える額ではなかった。ソフトウェアなどの外部に支払うライセンス料の予算はパソコン1台あたりたったの1000円。それを遥かに超えていた。
ヘンリーユーエンの Gemstar という会社は「番組を縦横のマスに配置し、上下左右のカーソルでマスを選択すると詳細を表示する」という、番組表の基本となる超強力な特許を持っていた。その頃の日本には電子番組表はまだなく、Gコードが新聞のテレビ欄に印刷されていた時代。ちなみにGコードのGはGemstarのG。

特許とにらめっこして考えたのが iEPG という仕組み。

番組表はHTMLで作る。縦横のマスにレンダリングするのはWebブラウザでなので「縦横のマスに配置しているのは、うちのソフトウェアは関係ありませんよ」という論法。
録画したい番組をマウスでポチると hoge.tvpi といファイルがダウンロードされてくる。拡張子でも Content-Type でも良いのだけれど、テレパソ(テレビを録画するパソコンの略)のソフトウェアにバインドされていて番組予約ができる、という仕組み。
フォーマットは読めば1秒で理解でき、誰でも作れるようにしたかった。
例えば、公式では
title: ワールドビジネスサテライト
station: テレビ東京
start: 23:00
end: 23:54
だけど、番組内の特定のコーナー「トレたま」だけを録画する iEPG を作るようにしたかった。例えばこんな風に:
title: ワールドビジネスサテライトのトレンドたまご
station: テレビ東京
start: 23:35
end: 23:42
まぁ実際には毎日きっかりこの時刻にトレたまがはじまるわけじゃいので、安全マージンみた時刻にしておけば、無駄に録画しなくて済むようにしたい、くらいの意図。
公式じゃなく、その後流行るUGCよろしくファンやマニアが作れるようにしたかったのだが全然流行らなかった。

放送局 stationのタグは123のような番号は振らず、"station: フジテレビ" と敢えて文字列にし、誰でもパーズできるようにした(私から引き継いだヤツが後に番号にしちゃったけど)。

仕組みを作っても実際の番組表のサイトを作らねばならなかった。グループ会社の持つポータルサイトに相談に行くもガン無視され、東京ニュース通信に相談。そこのエンジニアが面白がってくれて、数週間後にはサイトができていた。1999年、動きののろい大きな会社と、俊敏な小さな会社、スタートアップとかという言葉がまだない(知らなかっただけ?)ころの体験。大きな会社がシカトするのもそのはずで、このころはまだ常時接続ではなかった時代。「番組予約するためだけに10円払ってダイアルアップするか、ボケ!」と門前払いだったわけ。

番組表サイトは、しばらくその1社だけだった。その後、ポータルサイトが利用者獲得のためにあれこれとコンテンツを集め始めたのに呼応して、あちこちのサイトからお声がかかるようになった。infoseek, goo, yahoo の順番だったと思う。最後の最後がグループ会社。

そのグループ会社のサイトもとうとう iEPG をやめたことをmiyagawa tatsuhikoさんのポッドキャスト Rebuild.fm の第236回の放送で知った。以下引用:
 So-net のテレビ番組表サイトにその iEPG っていうなんかテキストファイルで何時から何時まで何チャンネルっていうのを登録できるフォーマットがあるんですね。そのフォーマットが2月末日をもってサービスを停止しましたってなってるんですけど、ありがたいことにURLのエンドポイントは動いてて、番組の ID をそこに投げるとまだ iEPG ファイルが落ちてくるっていう状態になってるんであーこれは中の人が消し忘れてんのかサポートはしないけど残してくれてんのかどっちだかわかんないけどありがたいなって…

平成最後の日に忘れかけてたことを思い出しながら

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